LOGIN双鹿はこういうときふざける人種ではない。それは分かっている。故に、双鹿の様子の変化にヴィクトは息を呑んで目の前のドラゴンと対峙する。
「どう、不味いんだ?」
まだ、ドラゴンにアタックをしていないからヘイトは引いていない。知っていることを聞くなら今しかない。
「アレは———ボスレアモンスター・デッドレウス。さっき話したでしょ、レアモンスターは強い、って。この部屋にいる本来のボスの10倍は強いのよ。アレ」
「初陣でヤバいのに当たったってコトだな……」
「しかも、死ぬか倒すまでこの部屋からの脱出は不可能よ。……ごめんなさい、普段あんなもの出てこなかったから……油断したわ」
双鹿の心からの謝罪。
「いや、レアモンスターが出るかは分からねーし、普段は出ないんだろ?なら仕方ない」
「でも……」
双鹿を背に剣を握る。
ヴィクトが次元渡りの剣を引き抜いて、秋峰に上方から襲い掛かる。だが、ヴィクトの剣は見えない障壁に阻まれて。「ッ……!?」 そして、ヴィクトが後方に飛ぶのと同時に、クロムとアザカが切りかかるが結果は一緒で。 秋峰は余裕そうに笑みを作りながら、口を開いた。「辞めた方がいい。一番力を持っている聖ユリアの神器の欠片を持っている俺を相手にしているんだ。君たちがただじゃ済まないよ」「っ、それでも!ラフィの望まない世界は作らせないッ!」 そうして、何度も何度もヴィクトの剣で、クロムの剣技で、アザカの刃で攻撃を繰り返す。だが、秋峰は1人シールドの中で守られて、余裕で。こちらは消耗していく一方で。「は、はあ……クソ……」「あれが、姫様の力ッ……」「通らねェッ……!」 秋峰はヴィクトたちを見て言うのだ。「気が済んだかい?ああ、安心して欲しい。今日はヴィクトくんのために1日時間を空けてある。存分に、満足するまで切りかかって……駄目だった、と諦めてくれ」 その言葉に腹が立った。腹が立って、悔しくて、歯がゆくて仕方なくて。 何度も何度も、ヴィクトは諦めずに切りかかる。 だけど、秋峰の障壁には傷1つつかない。こちらは神器の欠片を5つ所持しているというのに、たった、たった1つしか持っていない秋峰に刃を届かせることすらできない。ラフィという人がどれだけ強力な力を持っていたかを理解する。「クッ……」「俺は優しいから。今からでもヴィクトくんの願いを叶える準備がある。それに、クロム、君だってラフィの解放は望むだろう?幼い時から見てきた大事な姫だ。加えるなら、アザカくん君の望みも聞こうじゃないか、だから」「うっせぇ!!!!!!!!!!!!!!」 ヴィクトは心の奥底から叫んだ。煩い、そんなこと聞いちゃいない。ラフィを助けるた
そして、作戦決行の日は訪れた。 現実では女性陣が動き、そして、ゲーム内ではヴィクト、アザカ、クロムが動く。……まあ、動くと言っても現状は秋峰からのメールで指定された、ヴィクトのホームで待つだけなのだが。 3人とも一様に緊張していた。 ヴィクトも、アザカも、クロムでさえ緊張していた。そんな中、ないはずのインターホンの音が鳴り響いた。「……おでましだな」 そんなクロムの言葉に、ついに、という気持ちになる。「最後にもう一回聞くぞ……2人とも、俺についてきて悔いはないな?」 そんなヴィクトの問いかけに、アザカもクロムも頷いた。そんな2人と拳同士を触れ合わせれば、ヴィクトは玄関の扉を開ける。 そこにはインターホンを押した人間なんていなく、あるのは扉が開かれた豪華な馬車。この空間に似つかわしくないほどの豪華な馬車。「……これに乗ればいいのかァ?」「ああ。俺の時もそうだった」 クロムが苦々しく、忌々し気に呟く。クロムが秋峰に敗れた日、その日もまたこうして馬車に迎えられた、と。「行こう。大丈夫だ」 ヴィクトはそう言って、馬車に乗り込む。馬車のソファはふんわりとしていて、尻が沈んでいって。……クッソ高そうなのは分かった。 そして、隣にアザカ、正面にクロムが乗り込めば、馬車の扉は勝手に閉まり、馬車が走り出す。--------------------------------------------------------------- 景色がどんどん変わっていった。ヴィクトが設定していた景色から、聖ユリア王国の王都を抜け、マザーグースを抜け、デストロイアを抜け、オアシスを抜け、主人帝を抜け、ドールランドを抜け———最後に宇宙のような場所を走っている。 その光景は銀河鉄道の夜を思い出させる光景だった。 そして、最後。馬車が止ま
———夜・ラブホテルの一室。「なぁんでこんなことになってるんですかねェ!?」 皇のツッコみと肌同士のぶつかり合う音が部屋に響く。えーと、瑠奈とBarで飲んでいたと思ったらなぁんかいい雰囲気になってしまってあれやそれやでラブホテル。 まあまあ、皇も瑠奈もいい大人2人で。ラブホテルですることなんて1つしかなくて。「あっ、今更ぁ?」 瑠奈はホテルに入ってしまえばごろごろにゃんにゃんと甘えて、あんあん喘ぐ始末。普段の態度はどこへ行ってしまったのやら。 そして、皇が1回射精を迎えてもちんぽが硬いのを確認すれば、瑠奈は慣れた手つきでゴムを取り換えて、古いゴムをゴミ箱に投げ入れる。そして、再度跨って今度はゆるゆるとした惰性で行うようなセックスをしながら瑠奈が口を開いた。「皇、……ぁ、また、さ……私の婚約者になりなさいよっ……」「っ……え、なん、で……」 瑠奈のまんこの締め付けに腹筋を僅かに震わせながら、皇は言う。射精したばかりのちんぽは敏感になっていて、瑠奈の中のうねりだけでびくりと反応してしまって。……射精したばかりだから出ないんだけどね! 瑠奈は皇のちんぽでオナニーをするように腰を甘く揺すりながら、淡く微笑んだ。「なんでって聞ける神経が凄いわぁ……ほんと、鈍感で、腹が立つほどっ……」 瑠奈が前のめりになる。そして、唇が重なる。ちゅ、ちゅ、と何度も唇に吸い付いて吸い付かれて、瑠奈のアルコールの香りを感じる唾液に酔いながら、皇は瑠奈を見る。すると、瑠奈が唇が触れそうなほどの至近距離で言うのだ。「……好き、大好き。皇、好きよぉ……」 まるで恋人同士のような甘い響き。その響きに反応しないほど不能ではないけど、でも、分か
昼。その日は午前で愛鹿のところの仕事は終わらせた。そして、昼と言えば当然立ち寄る店がある。そう、嬉嬉軒だ。--------------------------------------------------------------- ———嬉嬉軒。「いらっしゃいませ……皇っ!」 皇の顔を見れば嬉しそうに駆け寄って来てくれる姫沙羅に癒しの波動を感じながら皇はいつも通り席に着いた。「おう、頑張ってるな。姫沙羅」「えへへー、でしょ?」 そう言えば、姫沙羅が厨房に声をかける。「お父さーん、休憩入っていいー?皇とご飯食べたーい」 その理由で休憩通るのか!?とツッコみたくなるが、姫沙羅の親父さんは快くOKしてくれて。「って言う訳で一緒にご飯食べていい?」「断る訳ないだろ。あ、注文だけ頼んだ」「あ、うん、何食べるー?」「んー……今日は腹減ってるんだよなぁ……」 そんなことを言いながら、メニュー表を眺める。こんな日は、ガツンと重いものを。そうだなあ……。「じゃあ、醤油ラーメンとミニ天津飯で」「りょうかーいっ」 姫沙羅が注文を厨房に入れてくれる。そうして、2人してテレビを見上げればAWMのニュースがやっていた。 どのニュースもAWMを褒め称える物ばかりで、なんというか、複雑な気分になってしまう。そんなことを思っていると、テーブルに皇のラーメンとミニ天津飯、そして、姫沙羅には……。「なんか美味そうなの出てきたな?」「でしょ?メニューにはない賄~チャーシュー丼」「なんだそれ、めっちゃ気になる……」 そんな会話をしながら、お互いに「いただきます」と食べ始める。 やっぱり、嬉嬉軒のメニューは何食
あの日の作戦会議の結果。女性陣は現実世界でオルドデウス社の告発の準備をきっちり進め、皇、クロム、薊の野郎3人で秋峰との話し合いに臨むということが決定された。 それまでの日数は、悔いの残らない様過ごすことを言い渡されて。もちろん、皇たちに負ける気なんてものは一切ないが。--------------------------------------------------------------- ———翌日・朝。薊と皇のアパート。 その日は、珍しく朝食を作る場に皇も立っていた。そう言う気分だったのだ。「てめぇが生地を作ったパンケーキぜってェ膨らまねェからな」「……みたいっすね……」 2口コンロに2本のフライパンを乗せて。じっくりフライパンを温めた後、バターを投入して、溶かしてからパンケーキの生地を落とした。皇の混ぜた生地と薊の混ぜた生地。それをじっくり見ていると、薊の宣言通り……皇のパンケーキはぺちゃんこだった。「だァ———ッ、言っただろ!?混ぜすぎだって!」「いや、だってきちんと混ぜた方がいいだろ!?」「パンケーキじゃなかったらなァ!?!?」 そう言いあいをしつつも、空気は悪くない。皇も薊もこの時間を楽しんでいた。お互いに、馬鹿みたいに笑えるこの時間を。--------------------------------------------------------------- 結局、食卓にはぺちゃんこのパンケーキと程よく膨らんだパンケーキ、スクランブルエッグにウインナーが並んだ。それらを優雅に食べながら会話をする。「てめぇは金輪際製菓はやるな。向いてねェ」「ういっす……」 そう言いつつ、薊は皇が焼いた方のパンケーキをメインに食い進める。こいつ、本当いいやつ。 そんなことを思っていると
紅華の切実な頼み。それに対して、皇は。「頼まれなくてもやりますよ。俺は、聖ユリア王国を、国王を、ラフィを助けたいんですから」 そんな皇の即答に紅華はゆっくり顔をあげて、薄い笑みを浮かべた。「……ありがとう」「……まあ、とりあえず俺だけは確定で。みんなはどうする?」 そんな皇の問いに、薊が口を開いた。「おいおい、此処まで来て〝じゃ!解散!〟は冷てェぞ?なあ?」 そんな薊の文句に、女性陣も「うんうん」と頷いて。「頼もしいな、本当」 そう皇の頬がついつい緩んだ。この全員で、生きて世界を救う、そんな誓いを1人立てながら、皇が紅華を見れば紅華が片手を挙げる。「作戦……と言えるほど緻密なものではないのだけれど、私から行動を提案させてもらってもいい?」「あ、それは全然。むしろ、本職(?)のご意見はありがたいです」 本職というのだろうか。公安の組織体系が微妙に分からないので単語の後にハテナまでついてしまう始末だ。「私は実行部隊だから本職ではないけれどね。提案は単純、ヴィクトくんが秋峰のゲーム内の体を押さえるのと同時に、現実世界で私が秋峰の体を押さえる。こうすれば、ヴィクトくんに追いつめられて現実に帰ってきてもなにもできない、と私は予測しているわ」 単純だが、それは大事な気がする。仮にゲーム内で圧倒したとしても、ログアウトして仕切りなおされたらたまったものではない。そういうことを防ぐためにも、両方の体を押さえる必要は出てくるだろう。 だが、皇が頷こうとした瞬間だった。発言権を求めるように片手を挙げたのは意外にもクロムだった。 全員の視線がクロムに向けば、クロムは何度か咳払いをしてから口を開いた。「紅華の言うことは正しい。だが、7つの神器を秋峰が手にした時点で恐らく世界は秋峰の望むものに改変されることになる……つまり、こちらでどれだけ体を押さえても無意味だ」 その言葉に沈黙が落ちる。だ